茂木 康(ルネサンス研究所・関西研究会運営委員)
2010年代を通して色褪せていった資本のグローバリゼーションとは対照的に、民衆のグローバリゼーションはその言葉本来の意味での可能性を広げてきたと。それは国家を超える可能性である。すぐに国家を超えることは無理だとしても、取りあえず背を向けたり、そっぽを向いたりしながら、国家というイデオロギーから民衆の身体を解放する可能性である。
資本のグローバリゼーションが求心力を失う中で、世界の権力者たちは人びとを「強力な国家」の下に統合し、「国民」として再編する傾向を強めている。コロナ禍に続くウクライナ危機の最中でその傾向にますます拍車がかかっている。彼らにとっては、それ以外に生み出された政治と経済の両面にわたる危機を乗り切る術がないのだから。しかしそれは、国内矛盾の先送りと深刻化、隣国同士の利害対立と緊張激化しか生み出さない。
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