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ケア・デモクラシー

更新日:2月7日

2025年1月25日(土)

連続講座「ジェンダー・ポリティクス」第2回

【講師】伊藤公雄(京都大学名誉教授)


 新自由主義は国際的な格差社会を拡大し、富の偏在の急激な拡大を生み出す一方で、資本の増殖に有益であれば、ジェンダー・人種・宗教に関係なく社会参画が可能な「開かれた」社会を形成してきました。新自由主義の下で拡大した「女性の社会参画・労働参画」は、男性主導社会の中で「社会的マジョリティ」であった「男性たちの危機」を生み出しています。それは女性の社会参画・労働参画によって「自分たちの既得権が奪われている」という「剥奪感」に根差したものです。「強くあるべき」「負けてはならない」「支配するべき」という「男性性」が達成できないことへの抑うつ感が、凶悪な暴力事件や性的暴力事件を引き起こしてもいます。

 アメリカでは共和党のドナルド・トランプが民主党の女性候補に圧勝する形で合衆国大統領に返り咲きましたが、トランプを押し上げた背景の一つに、「男だ」「白人だ」というだけで地位が保証された時代が終わりを告げていることに「剥奪感」を抱く白人男性たちの存在があったことは間違いないでしょう。それが権威主義的な政治を下から支える結果となっているのです。

 こうした政治の流れを転換する方向性として、「デモクラシーの基盤としてのケア」について考えていきたいと思います。ケア労働を一方的に女性に押し付けてケアを排除してきたデモクラシーから、ケアを中心とするデモクラシーへの転換です。この場合のケアとは単に育児や介護だけでなく、自他の生命、身体、意識、生活への十分な配慮や戦争防止までも視野に入れた、いわば「人類的活動」としてのケアです。



 


 
 
 

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